恵比寿で奥歯のクラックを保存|開咬によるエンド・ペリオ病変に対する精密根管治療と歯周組織再生療法

開咬による奥歯のクラックとエンド・ペリオ病変に対する保存治療
目次
恵比寿で行った精密根管治療・クラックリペア・歯周組織再生療法
「奥歯に亀裂が入っており、抜歯が必要と言われた」
「根の先まで感染が広がっているが、可能性があるなら自分の歯を残したい」
「根管治療と歯周病治療の両方が必要と言われたが、どのような治療になるのか分からない」
歯に生じるクラック、いわゆる亀裂は、虫歯とは異なり、歯の内部へ細菌が侵入する経路そのものが形成されている状態です。
クラックが浅い段階であれば修復できる可能性がありますが、亀裂が歯根方向へ進行し、根管内や歯周組織まで感染が広がった場合、歯の保存は非常に難しくなります。
今回ご紹介するのは、開咬によって奥歯へ負担が集中し、左右の奥歯にクラックを認めた患者さんです。
特に左上の奥歯ではクラックが深く進行し、歯周組織側から根尖部まで感染が波及していました。根管内の感染と歯周組織の感染が連続した、いわゆるエンド・ペリオ病変の状態です。
一般的には保存が困難であり、治療を行っても将来的に抜歯となる可能性があることを患者さんへ説明しました。
そのうえで患者さんから、
予知性が高くないことは理解しています。それでも、少しでも長く自分の歯で生活したいです。可能性があるなら治療を受けたいです。
というご希望がありました。
そこで恵比寿のUデンタルオフィス恵比寿では、
- ラバーダムを使用した精密根管治療
- マイクロスコープ下でのクラック周囲の感染除去
- 次亜塩素酸ナトリウムによる根管洗浄
- MTAを用いた根管充填とクラックリペア
- everX Posteriorによる接着築造
- エムドゲインと自家骨を用いた歯周組織再生療法
を組み合わせ、歯の保存を試みました。
治療後6か月の経過観察では、症状の改善と歯周組織・根尖部の治癒傾向を認めています。
今後は、クラックの原因の一つと考えられる開咬を改善するため、矯正治療を進める予定です。
なお、今回の治療結果は、すべてのクラック歯に当てはまるものではありません。クラックの位置や深さ、残っている歯質量、骨吸収の程度、歯の動揺、咬み合わせなどによっては、抜歯が適切となる場合もあります。
症例概要
主訴
左上の奥歯に違和感があり、可能であれば抜歯せずに自分の歯を残したい。
診断
- 開咬
- 左右臼歯部のクラック
- 左上臼歯の深いクラック
- 根管内感染
- 根尖性歯周炎
- クラックを介したエンド・ペリオ病変
- 限局性の深い歯周ポケット
- 歯周組織から根尖部まで連続した骨吸収
治療内容
- ラバーダム防湿
- マイクロスコープを使用した精密根管治療
- 根管内壁およびクラック周囲の感染除去
- 次亜塩素酸ナトリウムによる化学的洗浄
- MTAによる根管充填
- MTAによるクラックリペア
- 接着前のディコンタミネーション
- 象牙質接着処理
- everX Posteriorによる接着築造
- エムドゲイン、自家骨、MTAを用いた歯周組織再生療法
経過
治療後6か月で、症状の改善と画像上の治癒傾向を確認しました。
今後の治療
開咬によって奥歯へ集中している負担を軽減するため、矯正治療を予定しています。
開咬によって奥歯へ負担が集中していた症例
開咬とは、奥歯で噛んだときに上下の前歯が接触せず、前歯部分に隙間が残る噛み合わせです。
本来、食事や食いしばりによって発生する力は、前歯と奥歯を含む複数の歯によって分散されます。
しかし、開咬では前歯が噛み合わせに参加しにくいため、咬合力が奥歯へ偏りやすくなります。
その結果、臼歯部へ長期間にわたって繰り返し強い負担が加わり、
- 歯に細い亀裂が入る
- 詰め物や被せ物の周囲でクラックが進行する
- 噛んだときに痛みが出る
- 歯髄炎を起こす
- 歯の神経が壊死する
- 根管内へ感染が広がる
- クラックを介して歯周組織へ感染する
- 歯根破折に至る
といった問題が起こることがあります。
今回の患者さんでは、左上の奥歯だけではなく、左右両側の奥歯にクラックを認めていました。
つまり、1本の歯だけに偶発的な亀裂が生じたのではなく、開咬によって奥歯へ過度な力が集中する口腔内環境そのものが、クラックの発生や進行に関係していた可能性が高い状態でした。
感染した歯だけを治療しても、開咬を放置すれば、治療した歯のクラックが再び進行したり、ほかの奥歯に新たな亀裂が生じたりする可能性があります。
そのため今回は、まず感染が進行した歯に対する保存治療を行い、治癒を確認した後、矯正治療によって開咬を改善する計画としました。
奥歯のクラックはなぜ保存が難しいのか
歯のクラックは、一般的な虫歯とは異なる難しさがあります。
虫歯であれば、感染して軟らかくなった歯質を除去し、残った健全な歯質へ接着修復を行うことが基本です。
一方、クラックは非常に細い亀裂であり、肉眼では確認できないほど微細なことがあります。
また、クラック内部には、
- 細菌
- バイオフィルム
- 壊死した有機質
- 唾液由来の汚染物質
- 血液や組織液
などが入り込んでいる可能性があります。
すべてのクラックを完全に削って除去しようとすると、歯質を大きく失い、かえって歯の強度が低下してしまいます。
一方で、感染した部分を残しすぎると、再感染や炎症の原因となります。
そのためクラック歯の治療では、
- 感染した歯質を可能な範囲で除去する
- 保存できる歯質を過剰に削らない
- 根管内の細菌量を可能な限り減らす
- 器具が届かない部分を薬液で化学的に洗浄する
- クラックを介した再感染経路を封鎖する
- 残った歯質を接着によって一体化する
- 歯周組織側からの感染にも対応する
- 治療後に咬合力を適切に管理する
という複数の処置を組み合わせる必要があります。
今回のように、歯周組織側から根尖部まで感染が連続しているケースでは、根管治療だけ、あるいは歯周組織再生療法だけで十分な治癒が得られない可能性があります。
エンド・ペリオ病変とは
エンド・ペリオ病変とは、根管内の感染と歯周組織の感染が関連し、病変が連続している状態です。
「エンド」は歯内療法、つまり歯の神経や根管内に対する治療を意味します。
「ペリオ」は歯周治療、つまり歯ぐきや歯槽骨、歯根膜など、歯を支える組織に対する治療を意味します。
歯髄と歯周組織は完全に独立しているわけではなく、
- 根尖孔
- 側枝
- 副根管
- 象牙細管
- 歯根表面の欠損
- クラック
- 歯根破折
などを介して交通する可能性があります。
今回の症例では、歯に入ったクラックが細菌の侵入経路となり、歯周組織側から根尖方向へ感染が進行していました。
このようなケースでは、歯周ポケットを測定すると、クラックのある部分に限局して非常に深いポケットを認めることがあります。
また、CTでは歯根の側面から根尖部まで連続する骨吸収が確認されることがあります。
ただし、CTやレントゲンだけでクラックの深さや範囲を完全に判断することはできません。
診断には、
- 歯周ポケットの深さ
- 歯周ポケットの形態
- 排膿の有無
- 歯の動揺
- 噛んだときの痛み
- 打診痛
- 歯髄診断
- レントゲン所見
- CT所見
- マイクロスコープによる観察
- 外科処置時の歯根表面の確認
などを総合的に評価する必要があります。
保存治療を行う前に説明したこと
クラックが歯根方向へ深く進行し、歯周組織から根尖部まで感染が広がっている歯は、一般的に予知性が高いとはいえません。
治療直後に症状が改善しても、時間の経過とともに亀裂が再び開いたり、さらに深く進行したりする可能性があります。
また、クラックの内部をすべて目で確認し、完全に感染を除去することは困難です。
そのため患者さんには、保存治療を行う前に以下の点を説明しました。
- 治療をしても歯を保存できない可能性がある
- 治癒後もクラックが進行する可能性がある
- 痛みや腫れが再発する可能性がある
- 再感染によって将来的に抜歯が必要になる可能性がある
- 歯周外科後に歯肉退縮が生じる可能性がある
- 歯周組織が完全に元の状態へ戻るとは限らない
- 治療には複数回の通院が必要になる
- 長期間の経過観察が必要になる
- 開咬を改善しなければ奥歯への負担が続く可能性がある
そのうえで患者さんが「少しでも長く自分の歯を残したい」と希望されたため、保存治療を行いました。
今回の精密根管治療で重視した2つのポイント
今回の精密根管治療で特に重視したのは、
根管内壁とクラック周囲の徹底した感染除去
根管治療後の精密な接着と封鎖
の2点です。
根管治療は、単に歯の神経を除去し、根の中へ材料を詰めるだけの治療ではありません。
根管治療の本来の目的は、根管内の感染源を可能な限り減らし、細菌が再び侵入・増殖しにくい環境を作ることです。
特に今回のようなクラック歯では、感染が根管内壁だけではなく、亀裂に沿って広がっている可能性があります。
そのため、
- マイクロスコープでの拡大観察
- 感染歯質の除去
- 根管内の機械的清掃
- 薬液による化学的洗浄
- クラック部分の封鎖
- 歯冠側からの再感染防止
- 接着修復による歯質の補強
までを一連の治療として行いました。
ラバーダムを使用した精密根管治療
根管治療では、治療する歯を口腔内から隔離するため、ラバーダムと呼ばれるゴム製のシートを使用しました。
口腔内の唾液には、多くの細菌が存在します。
根管内を清掃している途中に唾液が侵入すると、清掃した根管内を再び汚染してしまう可能性があります。
また、根管洗浄に使用する次亜塩素酸ナトリウムが口腔内へ漏れないようにするためにも、ラバーダム防湿は重要です。
今回のようにクラックを封鎖し、接着操作を行う治療では、水分、血液、唾液などの混入が接着結果に影響する可能性があります。
そのためラバーダムは、
- 唾液による再感染の防止
- 根管洗浄剤の安全な使用
- マイクロスコープ下での視野の確保
- 接着操作時の防湿
- 小さな器具の誤嚥防止
という点で重要な役割を果たします。
マイクロスコープで骨縁付近までクラックを確認
クラックは非常に細く、通常の視野では確認が難しい場合があります。
そのため今回は、マイクロスコープを使用して歯質を拡大し、クラックの範囲と汚染状態を確認しました。
特に注意したのは、骨縁付近まで進行していたクラック周囲の感染除去です。
マイクロスコープ下で、
- 変色した歯質
- 軟化した歯質
- クラック周囲の汚染
- 接着を阻害する残留物
- 根管内壁の感染部分
を確認しながら、慎重に清掃を行いました。
ただし、クラックに沿ってすべての歯質を削ればよいわけではありません。
感染した部分を残しすぎれば再発の原因となりますが、削りすぎれば残存歯質が減り、歯の強度がさらに低下します。
そのため、感染除去と歯質保存のバランスを考えながら処置しました。
根管治療では化学的洗浄の時間も重要です
根管の内部は非常に複雑な形をしています。
根管には、
- 凹凸
- 枝分かれ
- 側枝
- 副根管
- フィン状構造
- イスムス
- 器具が接触しない部分
が存在します。
そのため、根管治療用の器具だけですべての感染物質を除去することはできません。
そこで重要になるのが、次亜塩素酸ナトリウムによる化学的洗浄です。
次亜塩素酸ナトリウムには、
- 細菌に対する作用
- 有機質を溶解する作用
- 壊死組織を分解する作用
があります。
ただし、洗浄効果は薬液の濃度だけで決まるものではありません。
- 薬液の量
- 薬液を交換する回数
- 根管内へ作用させる時間
- 薬液の温度
- 薬液の活性化
- 根管の形態
- バイオフィルムの成熟度
など、複数の条件が影響します。
日常生活でも、浴室のカビ取りや衣類の染み抜きでは、薬剤を塗ってすぐに洗い流すのではなく、一定時間つけ置きをすることがあります。
根管洗浄も、考え方としては似ています。
器具で直接取り除くことができない有機質や細菌性バイオフィルムに対して、薬液を適切な時間作用させることで、化学的な清掃効果を高めます。
今回の症例では、根管形成後に次亜塩素酸ナトリウムを根管内へ一定時間作用させ、途中で薬液を交換しながら洗浄を行いました。
ただし、次亜塩素酸ナトリウムを長時間使用すれば、必ず完全に殺菌できるわけではありません。
根管内は複雑であり、薬液が到達しにくい部分もあります。また、根尖外へ薬液が逸出すると組織障害を起こす可能性があります。
そのため、
- 洗浄針の位置
- 注入圧
- 根尖部の状態
- 根管の太さ
- 根尖孔の大きさ
- クラックの範囲
を考慮し、安全性に配慮して洗浄する必要があります。
MTAを用いた根管充填とクラックリペア
根管内の感染除去と洗浄後には、MTA系材料を使用して根管充填とクラック部分のリペアを行いました。
MTAは、水分がある環境でも硬化するカルシウムシリケート系材料です。
主に、
- 根尖部の封鎖
- 穿孔部の修復
- 逆根管充填
- 歯髄保存療法
- 内部吸収・外部吸収部位の封鎖
- 一部のクラックや欠損部のリペア
などに使用されます。
今回の治療では、根管内を可能な限り緊密に充填するとともに、クラック周囲の不整形な部分を封鎖する目的でMTAを使用しました。
MTAを使用したからといって、割れた歯が元の状態へ戻るわけではありません。
また、クラックのすべてが完全に封鎖されることを保証するものでもありません。
MTAの適合性は、
- クラックの幅
- クラックの深さ
- 材料の粒子径
- 練和状態
- 水分量
- 出血や汚染の有無
- 材料の填入方法
- 術者の操作
などに左右されます。
今回は、マイクロスコープで確認しながら、感染除去後の根管およびクラック周囲へMTAを慎重に填入しました。
根管治療後の接着操作
根管治療が終了しても、歯冠側から細菌が侵入すれば、再び根管内感染が起こる可能性があります。
特にクラック歯では、残った歯質が咬合力によってさらに開く方向へ動きやすいため、単に穴を材料で埋めるだけでは十分ではありません。
そのため、根管治療後の接着と封鎖は非常に重要です。
今回の症例では、接着操作の前に再度ディコンタミネーションを行いました。
根管治療後の象牙質表面には、
- 次亜塩素酸ナトリウム
- 根管充填材
- MTA
- 切削片
- 仮封材
- 血液
- 唾液
- 有機質
などが残っている可能性があります。
これらの汚染物質が残ったままでは、接着力が低下する可能性があります。
そのため、
- 接着面の再清掃
- ディコンタミネーション
- マイルドエッチング
- 象牙質表面の調整
- タンパク分解酵素の影響を考慮した処理
- 象牙質の硬質化を意識した処理
- ボンディング材の塗布
- 十分な光照射
- 接着築造
という手順で処置しました。
象牙質接着は、薬剤を塗るだけの処置ではありません。
歯質の状態、乾燥の程度、ボンディング材の塗布量、摩擦塗布、エアブロー、光照射器の出力や照射方向など、細かな操作が治療結果へ影響します。
everX Posteriorによる人工象牙質の築造
根管治療後の築造には、短繊維強化型コンポジットレジンであるeverX Posteriorを使用しました。
everX Posteriorは、短いガラス繊維を含むコンポジットレジンです。
大きく失われた象牙質部分を補い、歯の内部で応力を分散することを目的として使用されます。
クラック歯では、噛む力が加わったときに、亀裂をさらに広げる方向へ応力が集中する可能性があります。
短繊維強化型コンポジットレジンには、材料内部の繊維によってクラックの進展を抑えることが期待されています。
当院ではeverX Posteriorを、最終的なエナメル質の代わりとしてではなく、失われた象牙質を補う人工象牙質として使用しています。
ただし、everX Posteriorを使用すれば歯根破折を完全に防げるわけではありません。
長期的な予後には、
- 残存歯質量
- クラックの深さ
- フェルールの有無
- 接着操作
- 最終修復物の設計
- 咬合状態
- 食いしばりや歯ぎしり
- 定期的なメインテナンス
などが関係します。
歯周側からの感染に対する歯周組織再生療法
今回の症例では、クラックを介して歯周組織側から根尖部まで感染が進行していました。
根管内の感染を処置しても、歯周組織側に感染源や大きな骨欠損が残っていれば、十分な治癒が得られない可能性があります。
そのため精密根管治療と接着築造を行った後、歯周組織再生療法を実施しました。
外科処置では、
- 炎症性肉芽組織の除去
- 骨欠損部の清掃
- 歯根面の清掃
- クラック部分の確認
- MTAによるクラックリペア
- 自家骨の填入
- エムドゲインの使用
- 創部の安定化
- 緊密な縫合
を行いました。
歯周組織再生療法の目的は、単に骨補填材を入れることではありません。
歯周組織再生療法では、
- 歯槽骨
- 歯根膜
- セメント質
を含む歯周組織が治癒しやすい環境を整え、歯を支える組織の再構築を目指します。
今回使用したエムドゲインは、歯周組織再生療法に用いられる材料です。
また、患者さん自身の骨である自家骨を採取し、骨欠損部へ使用しました。
ただし、エムドゲインや自家骨を使用すれば、失われた歯周組織が必ず完全に再生するわけではありません。
歯周組織再生療法の結果には、
- 骨欠損の形態
- 残っている骨壁の数
- クラックの位置
- 感染源の除去状態
- 歯の動揺
- プラークコントロール
- 喫煙の有無
- 咬合力
- 創部の安定
- 術後のメインテナンス
などが影響します。
治療後6か月で治癒傾向を確認
治療後6か月の経過観察では、腫れや痛みなどの臨床症状が改善し、CTおよびレントゲンでも根尖部・歯周組織の治癒傾向を認めました。
今回のように、歯周組織から根尖部まで感染が進行していた歯で治癒傾向が得られたことは、歯を保存するうえで良好な経過と考えています。
ただし、6か月後の時点で症状がなく、画像上の改善を認めたとしても、長期的な保存が保証されたわけではありません。
クラックそのものが消えたわけではなく、今後も咬合力によって進行する可能性があります。
そのため今後も、
- 歯周ポケット検査
- 排膿の有無
- 歯の動揺
- 咬合状態
- レントゲン検査
- 必要に応じたCT検査
- 修復物の状態
- 痛みや違和感の有無
を継続して確認します。
開咬を改善しなければ、奥歯のクラックが再発する可能性があります
今回の治療では、感染した歯に対して精密根管治療、クラックリペア、接着修復、歯周組織再生療法を行いました。
しかし、歯にクラックが生じた原因と考えられる開咬は、まだ残っています。
開咬によって前歯が咬合に参加していない状態では、奥歯への負担が集中し続ける可能性があります。
実際に今回の患者さんでは、左上の歯だけではなく、両側の奥歯にクラックを認めました。
そのため、1本の歯だけを治療して終了ではありません。
今後は矯正治療によって、
- 前歯を咬合へ参加させる
- 奥歯だけに集中している力を分散する
- 臼歯部の咬合関係を整える
- 側方運動時の干渉を改善する
- 治療した歯へ過度な負担がかかりにくい環境を作る
ことを目指します。
歯を長く残すためには、感染を除去するだけではなく、なぜその歯が壊れたのかを考え、原因となる咬み合わせにも対応することが重要です。
抜歯と言われた歯はすべて保存できるのか
恵比寿の当院では、可能な限り自分の歯を残す治療を検討しています。
しかし、保存治療を行うことが、必ずしも患者さんにとって最善とは限りません。
以下のような場合は、保存治療の予知性が特に低くなります。
- クラックが歯根を完全に分断している
- 垂直性歯根破折が明確である
- 歯が複数の破折片に分離している
- 複数の歯根へ破折が広がっている
- 全周的に大きな骨吸収がある
- 歯の動揺が大きい
- 健全な歯質がほとんど残っていない
- 防湿や接着が困難である
- 感染除去後に修復可能な歯質が残らない
- 咬合力をコントロールできない
- 清掃性を確保できない
- 感染を繰り返している
無理に歯を残すことで感染が長期間続き、周囲の骨をさらに失ってしまうと、その後のインプラントやブリッジなどの治療が難しくなることがあります。
そのため、
- 歯を残せる可能性
- 保存できる期間の見込み
- 治療回数
- 治療費
- 再発の可能性
- 抜歯になった場合の治療方法
- 周囲の歯や骨への影響
- 患者さんが何を重視しているか
を総合的に考えて治療方針を決定します。
恵比寿で抜歯と言われた歯の保存治療をご希望の方へ
抜歯が必要と診断された歯でも、状態によっては精密根管治療や接着修復、歯周組織再生療法によって保存を検討できる場合があります。
特に、
- 根管治療をしても腫れが治らない
- 噛むと痛い
- 奥歯にクラックがあると言われた
- 歯根破折の可能性を指摘された
- 歯周ポケットが1か所だけ深い
- 根の先と歯周組織の両方に病変がある
- エンド・ペリオ病変と診断された
- 抜歯以外の選択肢を相談したい
- 自分の歯をできる限り残したい
という方は、保存の可能性を精密に診断することが重要です。
恵比寿のUデンタルオフィス恵比寿では、
- 歯科用CT
- マイクロスコープ
- ラバーダム
- 精密根管治療
- MTAを用いた修復
- 接着性材料による歯質保存治療
- 歯周組織再生療法
- 矯正治療
- 咬合診査
を組み合わせ、歯を保存できる可能性を検討しています。
ただし、診査の結果、保存治療の利益よりも再感染や骨吸収のリスクが高いと判断した場合には、抜歯をおすすめすることもあります。
無理に保存するのではなく、保存する場合と抜歯する場合のメリット・デメリットを説明し、患者さんと相談しながら治療方針を決めます。
まとめ
今回ご紹介したのは、開咬によって左右の奥歯にクラックが生じ、左上の奥歯では歯周組織から根尖部まで感染が進行したエンド・ペリオ病変の症例です。
一般的には保存が困難であり、治療後も抜歯になる可能性があることを患者さんへ説明しました。
そのうえで、少しでも長く自分の歯で生活したいというご希望を受け、
- ラバーダムを用いた精密根管治療
- マイクロスコープ下での感染除去
- 次亜塩素酸ナトリウムによる化学的洗浄
- MTAによる根管充填
- MTAによるクラックリペア
- 接着前のディコンタミネーション
- everX Posteriorによる接着築造
- エムドゲインと自家骨を用いた歯周組織再生療法
を行いました。
治療後6か月では、症状の改善と画像上の治癒傾向を確認しています。
ただし、現在の治癒は最終的なゴールではありません。
今後は矯正治療によって開咬を改善し、奥歯へ集中している負担を分散する必要があります。また、定期的な経過観察を行い、クラックの進行や感染の再発がないかを確認していきます。
抜歯と言われた歯であっても、状態によっては保存治療を検討できる場合があります。
一方で、すべての歯を保存できるわけではありません。
CT、マイクロスコープ、歯周組織検査、咬合診査などを行い、保存した場合と抜歯した場合の利点・欠点を比較したうえで、治療方針を決めることが大切です。
治療に伴うリスク・副作用
- 治療後に痛み、腫れ、出血が生じることがあります。
- 根管内およびクラック内部の細菌を完全に除去できない場合があります。
- 治療後に感染が再発する可能性があります。
- クラックが進行し、歯根破折に至る可能性があります。
- 治療途中または経過観察中に抜歯が必要になる場合があります。
- 歯周外科後に歯肉退縮が起こることがあります。
- 歯が長く見えることがあります。
- 知覚過敏が生じる場合があります。
- 歯と歯の間に隙間が生じる場合があります。
- 歯周組織再生療法を行っても、失われた組織が完全に再生するとは限りません。
- MTA、エムドゲイン、自家骨を使用しても、治癒を保証するものではありません。
- 接着修復物が欠けたり、脱離したりする可能性があります。
- 咬合力や食いしばり、歯ぎしりによって再び破折する可能性があります。
- 経過によっては再根管治療、追加の歯周外科、補綴治療、抜歯が必要になります。
- 矯正治療には、歯根吸収、歯肉退縮、虫歯、歯周病、後戻りなどのリスクがあります。





