【恵比寿で前歯の根元に大きな病変】根尖性歯周炎と切歯管嚢胞に対する精密根管治療・外科治療症例

「前歯の根元に大きな黒い影があると言われた」
「以前に根管治療をした歯なのに、歯ぐきの腫れや膿が治らない」
「前歯の根元に嚢胞があると言われた」
このような場合、原因が単純な根管内の感染だけとは限りません。
特に上顎前歯部には、歯根の近くに切歯管(鼻口蓋管)という解剖学的構造が存在します。
そのため、レントゲン写真で「根の先に大きな黒い影」が認められても、根管由来の根尖性歯周炎なのか、切歯管周囲に生じる病変なのか、あるいは複数の病変が近接しているのかを評価する必要があります。
今回ご紹介するのは、上顎前歯部に大きな病変を認めた患者さんに対してCT(CBCT)による三次元的な診査を行い、精密根管治療・外科処置・再生療法を組み合わせて治療した症例です。
前歯の根元に「黒い影」がある=すべて同じ病気ではありません
歯科医院でレントゲン写真を撮影した際、
「根の先に黒い影があります」
と言われることがあります。
しかし、レントゲン上の黒い影は病名そのものではありません。
重要なのは、その病変がどこから生じているのかを診断することです。
上顎前歯部では、特に根尖性歯周炎と切歯管周囲の病変との位置関係に注意が必要です。
根尖性歯周炎とは
根管内の感染などに伴って、歯根の先端周囲に炎症が生じる状態です。
症例によって、
- 噛むと痛い
- 歯が浮いたように感じる
- 歯ぐきが腫れる
- 膿が出る
などの症状がみられることがあります。
一方で、大きな病変が存在していても症状がほとんどない場合もあります。
根管由来の感染が原因であれば、まず根管内の感染源に対する治療を検討します。
切歯管嚢胞とは
切歯管嚢胞(鼻口蓋管嚢胞)は、上顎前歯の裏側付近に存在する鼻口蓋管の遺残組織などから発生する非歯原性嚢胞です。
歯そのものを原因として発生する根尖性病変とは成り立ちが異なります。
問題になるのは、切歯管が上顎中切歯の歯根に近いことです。
そのため二次元のレントゲン写真だけでは、歯根由来の病変と切歯管周囲の病変が重なって見える場合があります。
CT(CBCT)で病変の位置と広がりを立体的に評価

本症例では、CT(CBCT)を用いて、
- 病変の位置
- 病変の広がり
- 歯根との位置関係
- 切歯管との位置関係
- 周囲骨の状態
などを立体的に評価しました。
通常のレントゲン写真は二次元画像であるため、前後方向に重なっている構造物の位置関係を判断しにくい場合があります。
CTを使用することで、「黒い影があるか」だけではなく、「その病変がどこに存在しているのか」を確認しやすくなります。
ただし、CT画像だけですべての嚢胞性病変を確定診断できるわけではありません。
必要に応じて、摘出した組織の病理組織学的検査なども含めて診断します。
本症例の治療計画
今回重要だったのは、単に「もう一度根管治療をする」という考え方ではありません。
根管内、根尖部、切歯管周囲、周囲骨をそれぞれ評価し、原因と病変の位置に応じて治療を組み立てることでした。
治療は大きく、
- 精密根管治療
- 外科処置・嚢胞性病変への対応
- 骨欠損に対する再生療法
の順で行いました。
STEP1|まず根管内の状態を精密に評価
以前に根管治療を受けている歯でも、
- 未処置の根管
- 根管内の感染
- 不十分な根管充填
- 修復物からの漏洩
- 穿孔
- 歯根破折
など、さまざまな問題が関係している可能性があります。
そのため再根管治療では、単に以前の材料を入れ替えるだけではなく、なぜ根尖部に病変が生じているのかを評価することが重要です。
本症例では、歯を拡大して確認しながら根管内を清掃・洗浄し、根管由来の感染源に対して治療を行いました。
精密根管治療について
STEP2|根管治療だけでなく、根管外の病変も評価
根尖部に大きな透過像が存在していても、すべての症例で外科処置が必要になるわけではありません。
根管由来の病変であれば、適切な根管治療によって縮小・治癒に向かう場合があります。
一方で、今回のように切歯管周囲の病変など根管治療だけでは対応できない病変が疑われる場合には、病変の位置・大きさ・症状・周囲組織などを評価して外科処置を検討します。
本症例では、精密根管治療に加えて外科的に病変へアプローチしました。
ここで重要なのは、
「根の先に黒い影があるから根管治療」
と一律に考えるのではなく、
根管内の問題なのか、根管外の問題なのか、あるいは両方なのかを診断することです。
STEP3|嚢胞性病変に対する外科処置

病変の状態を確認し、必要な外科処置を行いました。
上顎前歯部には鼻腔、切歯管、隣接歯根など重要な解剖学的構造が存在するため、CTで位置関係を確認したうえで治療計画を立てます。
また、摘出した病変については、必要に応じて病理組織学的検査を行い診断します。
STEP4|骨欠損の状態を評価して再生療法を併用
大きな病変によって周囲に骨欠損が生じている場合には、欠損形態などを評価したうえで再生療法を併用することがあります。
再生療法はすべての根尖病変に必要な治療ではありません。
- 骨欠損の大きさ・形態
- 周囲に残っている骨
- 感染の状態
- 歯周組織
- 清掃状態
- 咬合
などを評価して適応を判断します。
本症例では、歯の周囲に認められた骨欠損の状態を評価し、治療計画の一部として再生療法を組み合わせました。
STEP5|術後3か月で画像上の変化を確認

術後3か月の画像では、治療前に認められた透過像に変化がみられ、骨形成を示唆する画像上の変化を確認しました。
ただし、術後3か月はまだ治癒過程です。
「3か月で完全に治った」と判断するのではなく、今後も、
- 症状
- 歯周組織
- 画像所見
- 歯の動揺
- 噛み合わせ
などを確認しながら長期的に経過を評価していきます。
この症例で重要だったのは「抜くか残すか」だけではありません
今回の患者さんは、他院で抜歯を含む治療について説明を受けていました。
しかし、この症例で重要だったのは、
「抜歯するか、残すか」だけを最初に決めることではありませんでした。
まず、
なぜ大きな病変ができているのか。
根管内に原因があるのか。
根管外にも病変が存在するのか。
切歯管とどのような位置関係にあるのか。
を診断することが必要でした。
そのうえで、精密根管治療・外科処置・再生療法を組み合わせました。
現時点では前歯を抜歯せず経過観察を続けていますが、今後も長期的な評価が必要です。

前歯の根尖病変では「診断」と「治療の順番」が重要です
大きな根尖病変を見ると、
「もう抜歯するしかないのでは」
と不安になる方もいると思います。
しかし、大きさだけで治療方法が決まるわけではありません。
反対に、すべての歯を保存できるわけでもありません。
歯根破折、残存歯質、歯周組織、病変の種類・範囲などによっては、抜歯が適切と判断される場合もあります。
だからこそ重要なのは、
「残せるかどうか」だけではなく、「何が原因なのか」を診断することです。
原因を評価したうえで、
根管治療 → 外科処置 → 再生療法
など、必要な治療を必要な順番で組み合わせます。
関連する治療・症例
精密根管治療
根管治療と歯周組織再生療法を組み合わせた症例
歯のクラックから根尖・歯周組織まで病変が広がった症例
よくある質問
Q. 根の先に大きな黒い影があると抜歯になりますか?
病変が大きいという理由だけで抜歯が決まるわけではありません。根管の状態、歯根破折の有無、残存歯質、歯周組織、病変の種類や位置などを評価して治療方針を検討します。
Q. 根尖性歯周炎は根管治療で治りますか?
根管内の感染が主な原因であれば、根管治療によって病変が縮小・治癒に向かう場合があります。ただし、歯根破折や根管外の病変などが関係している場合には、別の治療が必要になることがあります。
Q. 切歯管嚢胞は根管治療で治りますか?
切歯管嚢胞は歯そのものを原因とする病変ではないため、根管治療だけで治療する病変ではありません。歯の状態や病変の位置などを診断し、必要に応じて外科的な治療を検討します。
Q. CTを撮れば嚢胞かどうか分かりますか?
CTは病変の位置・範囲・周囲組織との関係を立体的に評価するために有用です。ただし、画像だけで確定診断できない病変もあり、必要に応じて病理組織学的検査などを行います。
Q. 一度根管治療した歯でも再治療できますか?
再根管治療を検討できる場合があります。ただし、歯根破折、穿孔、残存歯質などによって治療方法や予後は異なるため、まず現在の状態を詳しく診査します。
恵比寿で前歯の根尖病変・歯ぐきの腫れについてお悩みの方へ
「根管治療をしたのに腫れが治らない」
「前歯の根元に大きな黒い影がある」
「嚢胞があると言われた」
このような場合、重要なのは根管治療を繰り返すことではなく、病変の原因と位置を診断することです。
U DENTAL OFFICE EBISUでは、必要に応じてCT(CBCT)や拡大視野を用いて、歯根・根管・周囲骨・隣接する解剖学的構造まで評価します。
そのうえで、精密根管治療、外科処置、再生療法などから必要な治療を組み合わせます。
「何の治療をするか」より先に、「なぜ治っていないのか」を診断する。
当院では、この治療設計を大切にしています。
この記事の監修
U DENTAL OFFICE EBISU
歯科医師 生野 誠
2014年 九州歯科大学卒業。
慶應義塾大学病院 歯科・口腔外科にて研修。
日本口腔外科学会 認定医。
根管治療や外科処置において、患歯だけを見るのではなく、CTなどを用いて病変の位置、歯根、周囲骨、隣接する解剖学的構造を評価し、原因に応じて治療方法を組み合わせることを重視しています。
参考文献
- Nair PNR.
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