【歯ぎしりで前歯が短くなった方へ】削れた歯は治せる?ダイレクトボンディング・セラミックによる治療を歯科医師が解説|恵比寿
「昔より前歯が短くなった気がする」
「前歯の先端が平らになってきた」
「犬歯が丸くなって、以前のような尖った形ではなくなった」
「歯ぎしりで削れた歯は、元に戻せるのでしょうか?」
このようなお悩みで歯科医院を受診される方がいらっしゃいます。
歯ぎしりや食いしばりによって歯がすり減ることを、歯科では**咬耗(こうもう)**と呼びます。
歯の表面を覆うエナメル質は、一度大きく失われると自然には再生しません。
そのため、前歯が短くなったり、犬歯の形が変わったりした場合には、必要に応じて歯科治療によって形態を回復させることを検討します。
ただし、ここで大切なのは、単に削れた部分を元の長さに戻すことではありません。
なぜ歯が削れたのか。
どのような力が歯に加わっているのか。
修復した部分に、今後どのような負担がかかるのか。
こうした点を診断せずに見た目だけを整えても、修復物が欠けたり、再び摩耗したりする可能性があります。
U デンタルオフィス恵比寿では、歯ぎしりによる摩耗に対して、残っている歯質や噛み合わせを評価し、ダイレクトボンディング、セラミック修復、ナイトガードなどを組み合わせた治療を検討しています。
今回は、実際に歯ぎしりによって前歯や犬歯が摩耗した患者さんの症例を紹介しながら、削れた歯の治療方法について解説します。
歯ぎしりで前歯が削れるのはなぜ?
歯ぎしりは、上下の歯をこすり合わせたり、強く接触させたりする行為です。
睡眠中に生じるものを睡眠時ブラキシズム、起きている間に生じるものを覚醒時ブラキシズムと呼びます。
特に睡眠中の歯ぎしりは、ご自身では気づいていない場合があります。
「家族から歯ぎしりを指摘されたことがある」
「朝起きると顎が疲れている」
「前歯の先端が平らになってきた」
といったことが、受診のきっかけになる場合もあります。
歯ぎしりによって起こる咬耗
上下の歯が繰り返し接触すると、歯の表面が徐々にすり減ることがあります。
特に前歯や犬歯では、先端部分の形が変化することがあります。
例えば、以前は自然な丸みがあった前歯が平らになったり、犬歯の先端が短くなったりします。
摩耗が進行すると、歯の内部にある象牙質が露出し、冷たいものがしみる原因になることもあります。
歯ぎしり以外でも歯は削れます
ただし、歯がすり減っているからといって、原因が必ず歯ぎしりとは限りません。
酸性飲食物などによる酸蝕、強いブラッシングや外部からの摩擦など、複数の要因が関係することがあります。
また、過去に生じた摩耗の痕跡が残っているだけで、現在も同じ速度で進行しているとは限りません。
そのため当院では、歯の形だけを見て歯ぎしりと決めつけず、生活習慣や咬合状態なども確認します。
前歯が短くなると、どのような問題が起こる?
前歯の摩耗は、単に歯が短くなるだけの問題ではありません。
見た目と機能の両方に影響することがあります。
① 笑ったときの前歯の見え方が変わる
前歯の長さや先端の形は、笑顔の印象に関係します。
特に上の前歯は、笑ったときの見え方に影響するため、摩耗によって短くなると口元の印象が変化することがあります。
ただし、前歯の適切な長さは、歯だけで決まるわけではありません。
唇の動き、歯肉の位置、歯列、顔貌との調和などを考慮する必要があります。
② 犬歯の形が変化する
犬歯は、下顎を左右に動かしたときの歯の接触に関係することがあります。
犬歯が摩耗すると、側方運動時の接触関係が変化する場合があります。
ただし、犬歯誘導が失われたからといって、必ず奥歯に障害が起こるわけではありません。
重要なのは、その患者さんの咬合全体を評価することです。
③ 歯がしみることがある
摩耗が進行して象牙質が露出すると、冷たいものや歯ブラシなどの刺激でしみることがあります。
ただし、知覚過敏の原因は摩耗だけではありません。
歯肉退縮、虫歯、クラックなども考慮する必要があります。
④ 歯が欠けたり、修復物が壊れたりすることがある
歯質が薄くなった部分に力が加わると、歯が欠けることがあります。
また、すでにダイレクトボンディングやセラミック治療を受けている歯では、修復物の破折や脱離が起こる場合があります。
そのため、修復する際には見た目だけでなく、力のかかり方も考慮する必要があります。
歯ぎしりで削れた前歯は元に戻せますか?
一度失われたエナメル質は自然には再生しません。
しかし、歯科用の修復材料を使用することで、失われた歯の形態を回復できる場合があります。
代表的な治療方法には、ダイレクトボンディングやセラミック修復があります。
ただし、すべての摩耗に治療が必要というわけではありません。
症状がなく、摩耗が進行しておらず、機能的な問題も認められない場合には、経過観察を選択することもあります。
大切なのは、削れているから治すのではなく、治療が必要な状態なのかを診断することです。
治療方法① ダイレクトボンディングで削れた前歯を修復する
ダイレクトボンディングとは、歯科用コンポジットレジンを歯に直接接着し、形態を回復する治療方法です。
前歯の先端が摩耗して短くなった場合や、一部が欠けている場合などに検討されます。
ダイレクトボンディングのメリット
大きな特徴は、残っている歯質を生かしながら修復できることです。
症例によっては、歯を大きく削らずに形態を回復できます。
また、色調や透明感を調整しながら、周囲の歯との調和を図ることができます。
比較的小範囲の修復では、1回の治療で完了する場合もあります。
ダイレクトボンディングの注意点
一方で、コンポジットレジンには経年的な摩耗、着色、破折、脱離などのリスクがあります。
特に歯ぎしりによる摩耗がある患者さんでは、修復した部分にも力が加わる可能性があります。
そのため、どこにレジンを追加するか、どのような形態にするか、噛み合わせをどう設計するかが重要です。
単に削れた分だけ材料を足せばよいわけではありません。
治療方法② セラミックで前歯の形態を回復する
摩耗の範囲や歯質の状態によっては、セラミック修復を検討する場合があります。
セラミックには、色調や形態を再現しやすいという特徴があります。
ただし、セラミックだから必ず長持ちするというわけではありません。
歯ぎしりによる強い負担がある場合には、セラミックでも破折や脱離が生じる可能性があります。
また、修復方法によっては歯を削る必要があります。
そのため、当院ではダイレクトボンディングで対応できる歯に対して、最初からセラミッククラウンを選択するとは限りません。
何を使って治すかよりも、どの歯を、どの範囲まで、どのように修復するか。
この治療設計が重要だと考えています。
症例紹介|歯ぎしりで短くなった前歯・犬歯をダイレクトボンディングで修復

治療前の状態
今回ご紹介するのは、強い歯ぎしりによって犬歯から前歯にかけて摩耗が認められた患者さんです。
前歯の先端がすり減り、歯の長さや形態が変化していました。
このような状態では、単に歯の長さを戻すだけでなく、修復後の咬合接触も考慮する必要があります。
治療内容
本症例では、ダイレクトボンディングによって摩耗した前歯の形態を修復しました。
コンポジットレジンを用いて歯の長さや先端の形態を整え、周囲の歯との調和を図りました。

治療後の状態
ダイレクトボンディングによって、摩耗していた前歯の形態を回復しました。
歯の長さや先端の形が整うことで、口元の印象にも変化が見られました。
ただし、修復した部分が今後も摩耗しない、欠けないというわけではありません。
歯ぎしりや食いしばりによる負担が続く場合には、定期的な確認や修復物のメンテナンスが必要になります。
※治療結果には個人差があります。適応は残存歯質や咬合状態などによって異なります。
なぜ、前歯の長さを戻すだけでは不十分なのか?
ここが、当院が特に大切にしている部分です。
例えば、歯ぎしりによって前歯が2mm短くなっていたとします。
その歯に対して、単純に2mmのレジンを追加すれば、見た目の長さは回復するかもしれません。
しかし、下顎を動かしたときに修復部分へ強い力が集中する状態であれば、修復物が欠ける可能性があります。
また、前歯の形を変えることで、発音や下顎運動時の接触関係に影響する場合もあります。
そのため、修復前には以下のような点を確認します。
- 現在の前歯の長さと形態
- 上下の前歯の位置関係
- 犬歯の形態
- 下顎運動時の接触
- 奥歯の咬合状態
- 残存歯質
- 摩耗の進行状況
- 歯ぎしり・食いしばりの可能性
必要に応じて、診断用の模型やデジタルデータ、仮の修復などを用いて形態を検討します。
削れた歯をきれいにすることと、機能を考えて修復することは同じではありません。
私たちは、見た目と機能の両方を考えた治療を重視しています。
マウスピースだけで削れた歯は治りますか?
歯ぎしりに対して、ナイトガードと呼ばれるマウスピースを使用することがあります。
ナイトガードは、睡眠中の歯の接触による摩耗や修復物への負担を軽減する目的で使用します。
ただし、すでに失われた歯の長さや形態を、ナイトガードだけで回復することはできません。
そのため、摩耗の程度によっては、ナイトガードによる保護と歯の修復を組み合わせることがあります。
マウスピースを使えば歯ぎしりは治りますか?
ナイトガードは、歯ぎしりそのものを必ず止める治療ではありません。
歯や修復物を保護することが主な目的です。
また、ナイトガードによって顎関節症状や筋肉痛が必ず改善するわけでもありません。
症状に応じて、生活習慣や日中の歯の接触癖なども確認する必要があります。
歯ぎしりによる摩耗を放置しても大丈夫?
歯が摩耗していても、必ず治療が必要とは限りません。
一方で、摩耗が進行している場合や、歯質が薄くなっている場合には、早めに状態を確認することが重要です。
特に、次のような変化がある場合には歯科医院での診査をおすすめします。
- 以前より前歯が短くなった
- 犬歯の先端が平らになってきた
- 歯の先端が欠けることが増えた
- 冷たいものがしみる
- 前歯の詰め物が繰り返し欠ける
- 朝起きると顎や歯が疲れている
- 噛み合わせが以前と変わった気がする
摩耗の原因や進行状況を確認することで、必要な治療と経過観察を判断できます。
ダイレクトボンディングとセラミック、どちらがよい?
どちらが適しているかは、歯の状態によって異なります。
ダイレクトボンディングが選択肢になる場合
比較的小範囲の摩耗で、接着に適した歯質が残っている場合などです。
できるだけ歯を削らずに修復したい方にも、検討できる方法です。
ただし、咬合負担が大きい場合には、修復物が欠ける可能性があります。
セラミック修復を検討する場合
摩耗が広範囲に及んでいる場合や、既存の修復物の状態などから間接修復が適している場合です。
ただし、セラミックを選択する場合も、残存歯質や接着条件、咬合状態を十分に考慮する必要があります。
修復しないという選択肢
症状がなく、摩耗の進行が認められず、機能的な問題もない場合には、すぐに修復せず経過観察することもあります。
治療方法を決める前に、そもそも修復が必要なのかを判断することが大切です。
歯ぎしりで削れた前歯の治療後に気をつけること
ダイレクトボンディングやセラミックで形態を回復した後も、継続的な管理が重要です。
修復物の状態を定期的に確認する
修復部分に欠けや摩耗が生じていないか確認します。
特に前歯の先端部分は、下顎運動時に接触することがあるため、咬合状態も評価します。
必要に応じてナイトガードを使用する
睡眠時の歯ぎしりが疑われる場合には、歯や修復物を保護する目的でナイトガードを検討します。
日中の食いしばりにも注意する
仕事中や集中しているときなど、無意識に上下の歯を接触させている場合があります。
通常、安静時には上下の歯が離れていることが多いため、日中の歯の接触に気づくことも大切です。
欠けたり違和感が出たりしたら相談する
修復した部分が欠けた場合や、噛み合わせに違和感が出た場合には、早めにご相談ください。
よくある質問
歯ぎしりで短くなった前歯は元に戻せますか?
失われたエナメル質が自然に再生することはありませんが、ダイレクトボンディングやセラミックなどによって形態を回復できる場合があります。
適応は歯の摩耗の程度や残存歯質、噛み合わせによって異なります。
前歯が削れたら、必ずセラミックにする必要がありますか?
いいえ。
比較的小範囲の摩耗であれば、ダイレクトボンディングで対応できる場合があります。
また、状態によっては修復せず経過観察することもあります。
ダイレクトボンディングは歯を削りますか?
症例によっては、歯を大きく削らずに修復できます。
ただし、接着や形態修正のために必要な処置を行う場合があります。
歯ぎしりが強くてもダイレクトボンディングはできますか?
可能な場合があります。
ただし、修復部分に強い力が加わると、破折や脱離が起こる可能性があります。
そのため、修復範囲や咬合状態を確認したうえで適応を判断します。
前歯が削れると噛み合わせも悪くなりますか?
摩耗によって歯の形態や接触関係が変化することがあります。
ただし、摩耗があるからといって必ず噛み合わせに問題が生じるわけではありません。
歯列全体の状態を確認することが重要です。
マウスピースを作れば歯ぎしりは治りますか?
ナイトガードは歯ぎしりそのものを必ず止めるものではありません。
主に歯や修復物を保護する目的で使用します。
前歯の摩耗は保険診療で治せますか?
治療の必要性や修復方法などによって、保険診療の対象となる場合があります。
一方、審美的な形態回復を目的とした自由診療のダイレクトボンディングなどは、保険適用外となる場合があります。
診査後に治療方法と費用をご説明します。
恵比寿で歯ぎしり・前歯の摩耗にお悩みの方へ
歯ぎしりによって前歯が短くなったり、犬歯の形が変わったりすると、見た目が気になるだけでなく、今後さらに削れてしまうのではないかと不安になると思います。
しかし、すべての摩耗に大きな治療が必要なわけではありません。
残っている歯質や噛み合わせを確認し、必要に応じてダイレクトボンディングやセラミックなどを選択することで、歯の形態を回復できる場合があります。
U デンタルオフィス恵比寿では、単に前歯を長くするのではなく、なぜ摩耗が起こったのか、修復後にどのような力が加わるのかを考慮した治療を大切にしています。
削れた歯を元の形に近づけることだけでなく、これからもその歯を使い続けられるように考えること。
それが、当院の審美修復治療に対する考え方です。
前歯が短くなってきた方、歯ぎしりによる摩耗が気になる方、できるだけ歯を削らずに見た目を改善したい方は、一度ご相談ください。
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この記事の監修
U デンタルオフィス恵比寿
歯科医師 生野 誠
2014年 九州歯科大学卒業。
慶應義塾大学病院 歯科・口腔外科にて研修。
日本口腔外科学会 認定医。
審美補綴、ダイレクトボンディング、精密根管治療、矯正治療などを組み合わせ、残存歯質と噛み合わせを考慮した治療設計を重視しています。
参考文献
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- Loomans B, et al. Severe Tooth Wear: European Consensus Statement on Management Guidelines. J Adhes Dent.2017;19(2):111–119.
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