【歯医者が怖くて行けない方へ】歯科恐怖症・痛み・嘔吐反射への対策と静脈内鎮静法|恵比寿の歯科医師が解説
「歯医者が怖くて、何年も通えていない」
「歯を削る音を聞くだけで緊張してしまう」
「以前の歯科治療が痛くて、それ以来歯医者に行けない」
「口の中に器具が入ると吐きそうになる」
「虫歯や歯周病があるのは分かっているけれど、怖くて予約できない」
このようなお悩みをお持ちではありませんか?
歯科治療に対する恐怖や不安は、決して珍しいものではありません。
過去の痛みを伴う治療経験、歯を削る音、麻酔への不安、口の中に水が溜まる感覚、治療中に自由に動けないことなど、歯科治療が苦手になる理由は人によって異なります。
中には、歯科医院のことを考えるだけで強い緊張や動悸が生じ、長期間受診できなくなる方もいらっしゃいます。
こうした状態は、一般に「歯科恐怖症」と呼ばれることがあります。
しかし、歯医者が怖いからといって、無理に我慢して治療を受ける必要はありません。
大切なのは、何が怖いのかを確認し、その原因に合わせて治療方法や環境を調整することです。
U デンタルオフィス恵比寿では、歯科治療に強い不安を感じる方に対して、丁寧なカウンセリング、治療環境の工夫、必要に応じた鎮静法などを組み合わせて対応しています。
今回は、歯医者が怖くなる原因、歯科恐怖症の方が受診する際のポイント、痛みや嘔吐反射への対策、静脈内鎮静法について歯科医師が解説します。
歯医者が怖いのはなぜ?歯科恐怖症の主な原因
歯科治療に対する恐怖には、さまざまな原因があります。
同じ「歯医者が怖い」という言葉でも、実際に苦手と感じていることは患者さんによって異なります。
① 過去の歯科治療で痛い思いをした
歯科治療が怖くなる原因の一つが、過去の治療経験です。
「麻酔をしたのに痛かった」
「痛いと伝えたのに治療を続けられた」
「何をされるのか分からないまま治療が始まった」
こうした経験によって、歯科医院そのものに強い不安を感じるようになる場合があります。
特に、痛みを感じた際に治療を中断してもらえなかった経験は、次の受診に対する心理的な負担につながることがあります。
そのため、当院では治療前に不安な点を確認し、痛みや不快感がある場合には伝えていただける環境づくりを大切にしています。
② 歯を削る音や振動が怖い
歯科治療で使用するタービンの高い音が苦手という方もいらっしゃいます。
特に、過去に痛みを伴う治療を経験した方では、音を聞くだけで当時の記憶がよみがえり、緊張することがあります。
また、音だけでなく、歯を削る際の振動が苦手な方もいます。
③ 麻酔の注射が怖い
歯科治療そのものよりも、麻酔の注射が怖いという方も少なくありません。
針を刺す際の痛みや、麻酔薬を注入するときの圧迫感などが、不安の原因になることがあります。
こうした場合には、表面麻酔の使用や注射方法の工夫などを検討します。
④ 口の中に水が溜まる感覚が苦手
歯科治療では、歯を削る際の冷却や洗浄のために水を使用することがあります。
そのため、
「水が喉に流れ込む感じが怖い」
「息ができなくなりそう」
「飲み込めないことが不安」
という方もいらっしゃいます。
このような不快感には、吸引方法や防湿方法を工夫することで対応できる場合があります。
⑤ 嘔吐反射が強い
口の奥に器具が触れると、吐き気を感じることがあります。
これを嘔吐反射といいます。
嘔吐反射は生理的な防御反応ですが、反射が強い方では、歯型採りや奥歯の治療、口腔内写真の撮影などが難しくなる場合があります。
また、過去の経験から「また吐きそうになるのではないか」と不安になり、反射が強くなることもあります。
⑥ 治療中に何をされているか分からない
歯科治療では、患者さん自身が治療部位を直接見ることが難しいため、不安を感じることがあります。
また、治療中は口を開けているため、質問したり、不快感を伝えたりすることも簡単ではありません。
そのため、治療前の説明と、治療中に意思表示できる環境づくりが重要です。
歯医者が怖くて何年も行けないと、どうなる?
歯科医院への恐怖から受診を避けている間に、虫歯や歯周病が進行してしまう場合があります。
ただし、長期間受診していないからといって、必ず重度の病気になっているわけではありません。
まずは現在のお口の状態を確認することが重要です。
虫歯が進行している場合
初期の虫歯では自覚症状がないことがあります。
しかし、虫歯が進行して歯髄まで感染が及ぶと、強い痛みや腫れが生じる場合があります。
さらに進行すると、根管治療や抜歯が必要になることもあります。
歯周病が進行している場合
歯周病は、痛みなどの自覚症状が少ないまま進行することがあります。
歯を支える骨が失われると、歯の動揺や歯肉の腫れなどが生じ、重度の場合には歯を失う原因となります。
歯が欠けたり、抜けたりしたままの場合
歯を失った状態を長期間放置すると、周囲の歯が傾いたり、噛み合わせが変化したりする場合があります。
その結果、単純な欠損補綴だけでなく、矯正治療や歯周治療などを含む複雑な治療が必要になることもあります。
歯医者が怖くて長期間通えなかった方ほど、最初から治療を急ぐのではなく、現在の状態を整理して優先順位を決めることが大切です。
当院が歯科治療の恐怖や不安に対して行っている6つの取り組み
U デンタルオフィス恵比寿では、歯科治療に対する不安の原因に合わせて、さまざまな方法を検討しています。
① 治療前のカウンセリングと分かりやすい説明
歯科治療が怖い方にとって、「何をされるのか分からない」という状況は大きな負担になります。
そのため、当院では治療前のカウンセリングを大切にしています。
どのような治療が必要なのか、なぜその治療が必要なのか、どの程度の時間がかかるのかなどを説明します。
また、口腔内写真やレントゲン画像などを使用し、現在のお口の状態を視覚的に理解していただけるよう努めています。
患者さんが治療内容を理解し、納得したうえで治療を進めることが重要だと考えています。
② 痛みに配慮した局所麻酔
歯科治療において、痛みへの配慮は重要です。
必要に応じて表面麻酔を使用し、麻酔薬の注入速度や注射部位などに配慮します。
ただし、炎症が強い場合や治療部位によっては、局所麻酔の効果が十分に得られにくいことがあります。
そのような場合には、麻酔の追加や治療方法の変更などを検討します。
麻酔をすれば必ず無痛になるというわけではありませんが、痛みを我慢することを前提に治療を進めるべきではないと考えています。
③ 歯を削る音に配慮した5倍速コントラアングル
歯科治療特有の高い音が苦手な方に対して、当院では5倍速コントラアングルなどの器具を使用しています。
5倍速コントラアングルは、一般的なエアタービンとは駆動方式が異なり、治療時の音の性質にも違いがあります。
そのため、患者さんによっては不快感が軽減される場合があります。
ただし、すべての治療を無音で行えるわけではなく、振動や音が完全になくなるわけではありません。
治療内容や歯の状態に合わせて器具を選択しています。
④ ラバーダム・排唾管・ZOOによる口腔内環境の調整
歯科治療中に口の中へ水が溜まることが苦手な方に対して、当院ではラバーダム防湿や排唾管、ZOOシステムなどを活用しています。
ラバーダム防湿は、治療する歯をゴム製のシートで隔離する方法です。
主に根管治療や接着修復などで使用され、唾液や細菌の混入を防ぐことを目的としています。
また、治療中に使用する水や薬液が口腔内へ広がることを抑える役割もあります。
ただし、ラバーダムそのものに圧迫感を感じる方もいるため、患者さんの状態に合わせた判断が必要です。
排唾管やZOOシステムは、唾液や水分の吸引、口腔内環境の管理などに使用します。
こうした器具を適切に使い分けることで、治療中の不快感を軽減できる場合があります。
⑤ 抗不安薬の内服
歯科治療への不安が強い方に対しては、必要に応じて医科と連携し、抗不安薬の内服を検討する場合があります。
抗不安薬は、不安や緊張を和らげることを目的とした薬剤です。
ただし、薬剤の効果や副作用には個人差があります。
眠気やふらつきなどが生じる可能性があるため、服用後の運転や帰宅方法などについても注意が必要です。
また、持病や服用中のお薬によっては使用できない場合があります。
抗不安薬の使用は、診察や必要な確認を行ったうえで判断します。
⑥ 歯科麻酔科医による静脈内鎮静法
歯科治療に対する恐怖が非常に強い方や、長時間の治療が難しい方には、静脈内鎮静法を検討することがあります。
当院では、歯科麻酔科医による静脈内鎮静法に対応しています。
静脈内鎮静法は、静脈から鎮静薬を投与し、不安や緊張を和らげながら歯科治療を受ける方法です。
一般的には、うとうとした状態になり、治療中の不安や緊張が軽減されることがあります。
ただし、全身麻酔とは異なり、必ず完全に眠るわけではありません。
また、治療中の記憶が残る場合もあります。
静脈内鎮静法は痛みを取り除くための麻酔ではないため、通常は必要に応じて局所麻酔を併用します。
静脈内鎮静法とは?歯医者が怖い方の選択肢
静脈内鎮静法は、歯科治療に伴う不安や緊張を軽減するために用いられる方法です。
歯科治療に対する恐怖が強い方だけでなく、嘔吐反射が強い方や、長時間の治療が必要な方などでも検討されることがあります。
静脈内鎮静法は眠っている間に治療が終わりますか?
静脈内鎮静法では、うとうとした状態になることがあります。
ただし、鎮静の深さには個人差があり、全身麻酔のように完全に意識がなくなるとは限りません。
また、治療中の出来事を覚えている場合もあります。
そのため、「必ず眠っている間に治療が終わる」「治療中の記憶が完全になくなる」といった説明は適切ではありません。
静脈内鎮静法は痛くないですか?
静脈内鎮静法は、不安や緊張を和らげるための方法です。
痛みを取り除く作用は十分ではないため、通常は局所麻酔を併用します。
静脈内鎮静法は安全ですか?
静脈内鎮静法には、呼吸抑制、血圧低下、酸素飽和度の低下などのリスクがあります。
そのため、事前に全身状態や既往歴、服用薬などを確認し、必要なモニタリングを行うことが重要です。
患者さんの状態によっては、静脈内鎮静法を実施できない場合もあります。
静脈内鎮静法を受けた後は運転できますか?
鎮静薬の影響が残る可能性があるため、原則として当日の自動車やバイクなどの運転は避ける必要があります。
また、帰宅方法や付き添いの必要性については、使用する薬剤や患者さんの状態に応じて事前に確認します。
静脈内鎮静法は保険適用ですか?
保険適用の可否は、患者さんの状態や実施する治療、施設基準などによって異なります。
自由診療となる場合もあるため、費用については事前にご確認ください。
嘔吐反射が強くて歯医者に行けない方へ
「歯型を採ると吐きそうになる」
「奥歯を触られるとえずいてしまう」
「口の中に器具が入るだけで気持ち悪い」
このような方は、嘔吐反射が強い可能性があります。
嘔吐反射は、異物が喉の奥へ入ることを防ぐための生理的な反応です。
しかし、反射が強い場合には、通常の歯科治療が難しくなることがあります。
嘔吐反射への対策
嘔吐反射が強い方に対しては、原因や治療内容に応じて対応を検討します。
例えば、口腔内へ入れる器具の大きさや位置を調整する、治療中の姿勢を工夫する、吸引方法を調整するなどの方法があります。
また、治療に対する緊張が反射を強めている場合には、不安への対応も重要です。
必要に応じて、鎮静法などを検討することもあります。
ただし、嘔吐反射の原因や程度には個人差があるため、すべての方に同じ方法が有効とは限りません。
歯医者が怖い方は、最初から治療を受けなくてもよい?
歯科治療への恐怖が強い方にとって、最初の受診は大きな負担になることがあります。
そのため、緊急性が高くない場合には、最初から治療を進めるのではなく、相談や診査を中心に進めることも選択肢になります。
初診で確認したいこと
まずは、何が怖いのかを確認することが重要です。
例えば、
「痛みが怖い」
「音が苦手」
「口の中に水が溜まるのが嫌」
「嘔吐反射が強い」
「以前の治療で怖い思いをした」
など、できる範囲でお伝えください。
また、現在のお口の状態を確認し、どのような治療が必要なのかを整理します。
治療の優先順位を決める
長期間歯科医院へ通えていなかった場合、複数の歯に治療が必要なこともあります。
しかし、すべての治療を一度に始める必要があるとは限りません。
痛みや感染の有無、歯周病の進行度、噛み合わせなどを確認し、治療の優先順位を決めます。
患者さんの不安や生活環境も考慮しながら、無理のない治療計画を検討することが大切です。
歯医者が怖くて歯がボロボロになってしまった場合
歯科治療への恐怖から長期間受診できず、虫歯や歯周病が進行してしまう方もいらっしゃいます。
中には、
「歯が何本も欠けている」
「奥歯がなくなってしまった」
「歯がグラグラしている」
「人前で口を開けるのが恥ずかしい」
といったお悩みを抱えている方もいます。
このような場合でも、まずは現在の状態を正確に診断することが重要です。
すべての歯を抜く必要があるとは限りません
虫歯や歯周病が進行していても、精密根管治療や歯周治療、補綴治療などによって保存できる歯が残っている場合があります。
一方、歯根破折や重度の歯周組織破壊などによって、抜歯が適切と判断される歯もあります。
重要なのは、残せる歯と残すことが難しい歯を正確に見極めることです。
複数の治療を組み合わせる場合もあります
お口全体に問題がある場合には、虫歯治療だけでなく、根管治療、歯周治療、矯正治療、補綴治療、インプラント治療などを組み合わせる場合があります。
こうした治療では、1本ずつ場当たり的に治療するのではなく、噛み合わせや歯周組織の状態まで含めて治療計画を立てることが重要です。
U デンタルオフィス恵比寿では、歯をできるだけ保存することを重視しながら、お口全体の状態に応じた治療計画を検討しています。
歯科治療が怖い方にとって大切なのは「我慢」ではなく「治療設計」
歯科治療に対する恐怖や不安は、患者さんによって原因が異なります。
例えば、音が怖い方に対して静脈内鎮静法が必ず必要とは限りません。
一方、強い嘔吐反射や恐怖がある方では、通常の局所麻酔だけでは治療を進めることが難しい場合もあります。
そのため、当院では、まず不安の原因を確認し、必要な対策を組み合わせることを大切にしています。
音が怖い方には、使用する器具を工夫する。
水が苦手な方には、防湿や吸引方法を調整する。
痛みが怖い方には、局所麻酔の方法を検討する。
強い不安がある方には、必要に応じて抗不安薬や静脈内鎮静法を検討する。
大切なのは、患者さんに無理をしていただくことではなく、その方が治療を受けやすい環境をどのようにつくるかだと考えています。
よくある質問
歯医者が怖くて10年以上行っていません。受診できますか?
受診していただけます。
長期間受診していない場合には、まず現在のお口の状態を確認し、必要な治療を整理することが重要です。
最初からすべての治療を進めるとは限りませんので、不安な点をお伝えください。
歯科恐怖症でも虫歯治療はできますか?
恐怖の程度やお口の状態によって異なりますが、治療環境の調整や鎮静法などを検討できる場合があります。
まずは、何が苦手なのかを確認することが重要です。
歯医者が怖い場合、静脈内鎮静法を使えますか?
静脈内鎮静法が選択肢になる場合があります。
ただし、すべての患者さんに適応できるわけではありません。
既往歴や服用薬、全身状態などを確認したうえで判断します。
嘔吐反射が強くても根管治療はできますか?
嘔吐反射の程度によって異なりますが、防湿方法や器具の使用方法などを工夫することで治療できる場合があります。
必要に応じて鎮静法を検討することもあります。
静脈内鎮静法を使えば痛みは感じませんか?
静脈内鎮静法は不安や緊張を軽減するための方法であり、痛みを取り除くための局所麻酔とは異なります。
通常は必要に応じて局所麻酔を併用します。
初診では相談だけでも大丈夫ですか?
お口の状態や緊急性によって対応は異なりますが、相談や診査を中心に進めることも可能です。
予約時に歯科治療への不安が強いことをお伝えいただくと、診療内容を検討しやすくなります。
歯がボロボロでも怒られませんか?
長期間受診できなかった事情は、患者さんによって異なります。
当院では、これまでの経緯を責めるのではなく、現在のお口の状態を確認し、今後どのような治療が必要かを一緒に考えることを大切にしています。
恵比寿で歯医者が怖い・歯科恐怖症にお悩みの方へ
歯科治療が怖い理由は、人によって異なります。
痛みが怖い方もいれば、音や振動が苦手な方、嘔吐反射が強い方、過去の治療経験から歯科医院へ行けなくなった方もいらっしゃいます。
そのため、すべての患者さんに同じ方法で対応するのではなく、不安の原因に合わせて治療方法を検討することが重要です。
U デンタルオフィス恵比寿では、丁寧なカウンセリング、痛みに配慮した局所麻酔、静音機器、ラバーダムやZOOによる口腔内環境の調整、必要に応じた静脈内鎮静法などを組み合わせて対応しています。
また、長期間歯科医院へ通えず、虫歯や歯周病が進行してしまった方に対しても、歯をできるだけ保存することを重視しながら、治療計画を検討しています。
歯医者が怖いことを、無理に隠す必要はありません。
「歯医者が怖くて何年も行けていない」
「痛みが怖くて治療を受けられない」
「嘔吐反射が強く、歯科治療が難しい」
「歯がボロボロになってしまったけれど、どうすればよいか分からない」
という方は、一度ご相談ください。
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この記事の監修
U デンタルオフィス恵比寿
歯科医師 生野 誠
2014年 九州歯科大学卒業
慶應義塾大学病院 歯科・口腔外科にて研修
日本口腔外科学会 認定医
精密根管治療、歯周治療、審美補綴、インプラント治療、矯正治療などを組み合わせ、歯をできるだけ保存するための診断と治療設計を重視しています。
参考文献
- Appukuttan DP. Strategies to manage patients with dental anxiety and dental phobia: Literature review. Clinical, Cosmetic and Investigational Dentistry. 2016;8:35–50.
- Armfield JM, Heaton LJ. Management of fear and anxiety in the dental clinic: A review. Australian Dental Journal.2013;58(4):390–407.
- American Dental Association. Guidelines for the Use of Sedation and General Anesthesia by Dentists. 2016.
- 日本歯科麻酔学会.歯科診療における静脈内鎮静法ガイドライン.









